見終えて、まずの感想としては「うまくなったなあ!」
プロの演奏家に大変失礼とも思うが、本当に上手になった。演奏はもちろんだが、ステージの魅せ方、MC(ステージ上でのおしゃべり)も、すっかり板について、津軽三味線アーティスト「小林史佳」の実力と可能性をみせつけた舞台だった。後日談だが、日舞を習っている娘の稽古場へ行ったら、ほとんどの人が彼の舞台を見ていた。お稽古に来ている方は、料亭のおかみさんや踊りの名取りの皆さんで、三味線にも精通している人ばかりだが、口々に「小林さんはほんにお上手になりなって」と誉めていたので、「うまくなった」と感じた私の感想も間違ってはいないのだろう。
今回のステージで観客を魅了したのは、なんといっても弦楽4重奏+パーカッションとの競演!
パーカッションの和田啓さんの編曲は、津軽の名曲をなんともさわやかな、それでいて気品に満ちた曲へと仕上げていた。三味線1丁で聞くときには、吹きすさぶ吹雪や日本海の荒波など、どちらかといえば哀愁を強く感じる曲も、中世のホールで聞く室内楽のようなきらきらした音を含んで、コンサートホールに響き渡った。
圧巻はこの競演のために作曲された「ダブルスコープ」。万華鏡のように音が開いてはまわり、はじけ、うねる。その中心に津軽三味線をリードギターのように操る小林さんがいて、音をまとめている。レンズを通った光が、一点に集中するような凝縮感。そして和田さんの操るふしぎに懐かしい感じの打楽器の音が風のように舞う。この曲でステージは最高の盛り上がりを見せた。大きく鳴り響く拍手。観客とステージの一体感は、これまでのステージとは違う何かがあった。しかしながら、この大曲を終えてから、彼はスタンダードな津軽の曲を2曲、そして自身の曲である「即興曲」を演奏したのだ。最後はしっかり、「津軽三味線奏者 小林史佳」だった。
津軽三味線に限らず、伝統的な和楽器による古典は、聞く側に緊張を強いる。演奏がよくわからないと「自分の教養が足りない」と恥じたりする。私もその一人で、「勉強してからこないと、うまいのかどうかわからない」と思う部分があった。しかし、小林さんは今回の講演でまさに「プロ奏者」になった気がした。伝統芸能の奥深さも、津軽三味線のバックボーンもわからなくても、聞くだけで楽しめる。コンサートはコンクールではないのだから、お金を払って見にくる「お客様」が楽しめることが最重要だ。この演奏会、私はとても楽しかった。そして、私の9歳の娘もとても楽しんでいた。 |